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2016年からMLB(メージャーリーグ)全30球団のオフィシャルソックスサプライヤーとなった”STANCE”。国内でも読売ジャイアンツのほか、2022年からスタートしたJAPAN WINTER LEAGUE(以下JWL)のサポートを務めるなど、野球業界を選手の足元から支えている。
1回目の記事ではJWLについて代表・鷲崎一誠氏に話を聞いてきたが、どんな思いがJWLを作る原動力になったのか。今回はそれに至るまでの考えをインタビュー。(第2回/全2回)
鷲崎一誠
JAPAN WINTER LEAGUE代表
@japanwinterleague
今は経営者として野球業界を盛り上げる立場にある鷲崎さん。ただ野球が好きという気持ちだけでなく、「野球を通して人生を学んだ」経験がバックボーンにあり、今に至ると話す。「野球を始めたのは小学2年生から。まずは甲子園に出るのを目標に、その時住んでいた福岡から通える佐賀の高校に進学しました。」
「野球漬けの毎日でしたが、3年生で甲子園の切符を掴むことができなかった。そんな時、慶應大学野球部に進学した先輩の活躍を見る機会があり、その姿が本当にかっこよくて。そこから『俺も慶応大の野球部に行く!』と目標を切り替え、一気に勉強漬けの日々。これまで人一倍練習してきた自負があったので、勉強量もこなせる自信がありました。」
これまでほぼ勉強と無縁の日々だった中で、一浪を経て進学を決めた鷲崎さん。「学校の先生から慶応に関する資料をもらえないほど、無謀だと思われていましたが、これまで野球で学んだ『諦めないこと』や『努力を続けること』が活き、受験も乗り越えることができました。」
無事に大学へ進学し、野球部へ所属するものの、そこで自分の実力の限界を見たと話す。「大学では全国から猛者が集まってくるわけです。これまで練習量だけは自信がありましたが、それも足元に及ばないと知って。結局最終学年の試合に出られず、悔しい思いをした時に出会ったのがウィンターリーグです。」
プレイヤー人生に一区切り付けた鷲崎さんが次の目標に掲げたのは「経営者としての成功」。新卒では大手アパレルメーカーに勤務し、人材育成にも携わってきたが、目標を達成するため5年目にキッパリと独立を決意。大学時代の友人とIT系の会社を立ち上げた。
「高校野球も大学野球も、しっかり区切りをつけて次の目標に進めたのは、両親の影響も大きいです。特に父は尊敬し、乗り越えたい存在。常々『努力したら変われる。必死に目の前のことを達成する』ことを教えられてきました。次のステップを決めたら、しっかりスイッチを切り替え努力する。その教えが染み付いていたから、JWLも発足できたと思います。」
残念ながらIT会社での初事業はうまくいかず、次の事業計画を考えたそう。「本当はスポーツ事業を始めるつもりはなかったんです。でもこれまでの経験を振り返り、もう少し視野を広げようと思って。そこで日本でウィンターリーグを立ち上げる計画書を作りました。」
実はこの時のパートナーは大学野球部の仲間。「彼もスポーツ事業の難しさをわかっていたからこそ、反対の立場でした。でも計画を煮詰めるほど『次はスポーツ産業を変えていく』ミッションを課せられていると思った。だからしっかり話し合って自分は独立すると決め、快く送り出してもらいました。」
計画を進める中で、次第に大きくなる活動。そしてパートナーを探すことを決意し、トレーナーとして活躍していた山田京介氏を副代表として迎える。「彼はカリフォルニアウィンターリーグでの仲間でした。自分の考えに賛同してくれ、彼がいなかったらJWLはできていません。ほかにも、初のスポンサーは高校野球の同期キャプテンが手を上げてくれ、これまでのご縁が僕の人生を変えてくれました。」
「野球チームは辛い練習を一緒に乗り越えるため、家族のような連帯感が生まれます。JWLも各チーム初日はメンバー全員口数が少ないのに、試合が始まると、まるで長年の友人だったかのように打ち解けます。そんなチームの存在は、誰しも今後の人生において大事な存在になると確信しています。」
もちろん鷲崎さんの過去の経験が反映され、ウェアにもこだわっているとか。「ウェア類は持ち帰り可能。思い出に残るためロゴのデザインもこだわりましたが、動きやすさも重視しして選びました。着るもので動きが変わると知ったのは、アパレル時代の経験から。」そんなJWLのソックスは全員足元からパフォーマンスを上げてほしいとの考えから、STANCEで揃えたそう。
「JWLのプログラムの中には、これまでの経験をもっと抽象化させ、自分の心の根底・根本を探っていく講座もあります。リーグ中はもちろん試合第一ですが、ここでの経験が後に活きて、次のステップに進む準備になるはず。今後は自分のように、これまでのご縁と経験を元にもっと活躍できるような人材を排出できる、プラットフォーム作りを目指しています。」今年も11月23日から始まるリーグ。鷲崎さんの思いと各選手の思いが重なり、記憶に残る試合になること必至だ。
photo:Yuji Sato
interview&text:Shiyori Kawamura